好きなことを仕事に。

学生時代のこと。川口の部屋には、中古のパチンコ台3台とパチスロ1台が鎮座していた。世の中にパチンコ好きは数多くいても、ここまでピュアにパチンコを愛する人間も珍しい。経済学部の仲間たちが皆、金融、商社、製造業に就職する中、川口が選んだのがオータだった。「パチンコで日本一になる」。故郷豊橋で電気店からパチンコ業を起こした太田会長(当時社長)の夢にひかれた。自分も大好きなパチンコでお客様を楽しませたい。「本気で考え抜いたことなら、なんでもやらせてもらえた。ありがたかったですね。」新人の頃、店長に直談判してメロンを大量に仕入れた。「絶対売り切ってみせます!」。メロンを山積みにし、ワープロとマジックで作った大型のPOPを貼り出した。期待通りどんどん売れていく。「よし!」。だが閉店間際、あと一個が残った。「かわいそうなメロンちゃん、あと一個です!」マイクを持ってアナウンスすると、願いが通じて見事完売。毎日がこんな感じ。がむしゃらで、ただ楽しかった。

手を挙げて取締役に。

店舗勤務のあと、営業経理を経て、本社勤務へ。常に目の前の仕事に全力で取り組んできた。「いつもはじめは小さな仕事から。でもそこで120%の成果を出せば、次はもっと大きな仕事を任せてもらえる。自分はその繰り返しで成長してきました。」ただ、決して上手くいったことばかりではない。チャレンジはいつもプレッシャーを伴う。「30代の頃はよく円形脱毛症で悩みました。」川口は冗談めかしてそう振り返る。のめり込んでしまう性格がときに自らを苦しめた。ひたすら頑張るしかやり方をしらない。そんな姿を見かねたのか、あるとき上司が声をかけてくれた。「今すぐ満点取ろうとするな。お前らしくやればいい」。思わず涙がこぼれた。その後は愛知に戻って管理部門の道を歩んだ。2012年夏、川口に転機が訪れる。社内に大型ホテルの買収話が持ち上がっていた。場所は故郷豊橋。運命を感じずにはいられなかった。「自分にやらせてもらえませんか。」手は自然と挙がった。

ここで学んできたこと。

2012年11月、株式会社タワーホテルアンドリゾート取締役に就任。とは言っても川口にホテル業界の知識はない。ただ、ある確信があった。「誰の中にも前向きな気持ちが必ずあります。その気持ちを引き出すことが私の仕事です。」赴任直後、川口はスタッフ全員を前にこう切り出した。「私はホテルのことを知りません。だから皆さんに教えてほしい。どうすれば今よりもっとこのホテルがよくなるのか。もっとお客様に喜んでいただけるのか。良いと思ったことはどんどん声に出してください。」川口の呼びかけに最初は半信半疑だったスタッフたちから、少しずつ声が上がり出した。「あの部屋の畳を替えたほうがいい」「こんな料理をメニューに加えてみたらどうか」。出てきたアイデアは可能な限り実行に移していく。そこは多少の無理をしてでも。みんなの表情が明るくなってきた。代表取締役に就任してから稼働率は90%を越えている。川口は新人の頃の自分を思い出していた。「誰でも自分から言い出したことは一生懸命やります。それがオータで学んできたこと。もっとたくさんの言い出しっぺが生まれていけば、その分だけこのホテルが良くなっていきます。」

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